こんにちは。
今日の一冊はこちらです。
◆「異端のススメ」―林 修 ・ 小池 百合子 (宝島社)
今では当たり前の概念となった「クールビズ」の推進者であり、第20代東京都知事として都政を司る小池百合子さん。
そして、流行語大賞となった「いつやるの?今でしょ!」の生みの親であり、予備校講師兼タレントとして活躍している林修先生。
時の人となった(なっている)2人の対談ですが、実は本書が発行されたのは2013年の12月28日。
つまり、小池さんが都知事になる前の話であり、林先生はちょうどブレイクし始めた頃に実現した対談なのです。その時系列を踏まえて読むと、更におもしろかったですよ。
◆推奨ターゲット
・異端と呼ばれる生き方に憧れを抱いている方
・人と違う一歩を踏み出す勇気が欲しい方
◆1分要約
・「優秀な“女子力”が社会で十分に発揮できるよう尽力されている女性とお話をしたい」という林先生の思いから実現した。
・全9章の構成で、両者が学生時代の頃の話から転換期の話まで幅広く収録されている。
・日本における教育の課題や、世界と比較した時の強さ・弱さについても言及。
・中盤以降は、「社会における女性力の活用」というテーマに対する問題提起も多い。
・「異端」と呼ばれる両者の半生と価値観がリアルに伝わる一冊。
◆共感点
第六章 「女性=異端」では困る時代
女性を活用しないのは「もったいない」(P94-97) より
小池:女同士の嫉妬は、残念ながらまだ社会的な地位が十分確保されていない現状ではあまり問題にならない。女同士の足の引っ張り合いはかわいらしいものだと思います。ところが、男同士の嫉妬は、性質が悪いので――。時には国を危める場合もあるでしょう。
林:おっしゃるとおりです。
小池:だから前から、「嫉妬」の2文字の女偏を男偏に変えるべきだと言っているんですよ。
林:あれを女偏にしたのが男の嫉妬なんですよ。自分たちの嫉妬が強いことをわかっているから、女に押し付けるために、ああいう女偏の字を作った男がいるんだよ、という話を若い生徒たちにもしています。
小池:ああ、そう。ほんと迷惑な。あと女々しいって言うじゃないですか。
林:はい。
小池:女々しい男がどれほどいますか。今、世の中に。
林:ほんとに軟弱というか。
これは盲点でした。確かに、ネガティブな意味を持つ言葉って女偏が使われることが多いですよね。奴とか、嫌いとか、媚びるとか。(好きもある意味では)
某人気漫画で「男のジェラシーは見苦しいぜ…」というセリフがありましたが、まさにそのとおり。
あくまで偏見ですが、どちらかと言うと僕らよりも上の世代に多いような気がします。(社会構造的に) この際なので昔から思っていたことを書きますが、しょうもない男性って、自分より優秀な女性をすごく牽制しますよね。焦りなのか嫉妬なのか何なのかわかりませんが、少なくとも自分と同等以上のポストには就かせないでしょう。(もちろん、そうじゃない男性もいっぱいいると思いますが)
あと、「亭主関白」とか本当に何のメリットも生産性もない概念だと思います。僕らの世代からでも、性別に関係なく優秀な人が評価される社会にしたいですね。
第八章 異端な改革論
今度は働き方の意識改革(P137-139) より
小池:私は環境大臣のときに、クールビズを始めましたが、あのときは地球温暖化という問題を国民の皆さんと共有できていたと思います。
(中略)
そこで、地球温暖化は一人ひとりに関わる話だから、論理的に説明することも必要ではあるけれど、それ以上にみんなに実際のアクションを取ってもらいたいということで始めたのが、例のクールビズでした。私は、営業の男性たちが暑い日本の夏に、ギラギラと照り返しがくる道を、大きなバッグを抱え、ネクタイとジャケットを着込み、汗をダラダラ流しながらトボトボと歩く姿を気の毒に思ってきました。一方で、その人たちの服装に合わせた室温にしていると、朝から、ずっと会社にいる女性たちは、夏なのに膝掛けをしている。これは、理屈に合わないと思って、人間様の意識から変えようという発想から出た大胆な政策です。クールビズが、第1弾ならば、第2弾は働き方の意識改革をしたい。
小池さんの凄いところは、キャスターだった経験もあるせいか、政治家の中でも飛び抜けてメディアの特性を理解していることだと思います。勿論、クールビズやエコバッグのように、本来大きなテーマとして扱われる問題を、身近な形の解決策として推進させる実行力があるところも。
「劇場型」と揶揄され、豊洲移転問題で非難されながらも、いまだに支持率7割越えは本当に凄いですよね。(行政手続きの一環としてプロセスを踏む必要があるとはいえ、進むも地獄・退くも地獄の豊洲移転問題に関してはそろそろ収束させて欲しいところですが…こんなことを言うのは失礼ですが、小池さんの時間と労力をいつまでも豊洲問題に使うのは本当に勿体ないような…)
第九章 異端のススメ
運が9割、とにかくチャレンジ!(P155-158) より
林:僕はいつも「やりたいこと」「やるべきこと」「やれること」と、ものごとを3つに分けます。やりたいことは基本的にお金を払って趣味でやればいいと。「やるべきこと」はやるべきなんだから、これは好きだの嫌いだの言ってはいられない。そして、仕事は「やれること」を選んで、お金を払う人に対して責任を果たしていかねばならないという感覚なんですよ。だから、若いときにカッコいいからと手を出したいくつもの仕事を、「やりたい」からと続けていたら、今、どうなっていたか。結果が出ない以上仕方がないと、スパッとあきらめて、「“やれること”は何か?」と切り替えていたから、今があると思います。
WANT・MUST・CANの視点は、新人時代に研修で習いましたが、林先生の場合はCANの視点が強かったようですね。僕は常にWANTの視点から考えていたのですが、確かにそれだけでは成り立たなくなることが目に見えていますからね…笑
小池さんはレッドオーシャンの中で赤を極める決断をし、林先生は自分らしさが活かせるブルーオーシャンを求めて、そこで確固たるポジションを築いた。
それぞれ、相反する生き方のように見えますが、その中身を見ると、どちらも常に人と違う一歩を踏み出してきたようです。本書を通じて、自分と向き合い、自分を俯瞰した上で進む道を考えることの大切さを学ぶことができました。そして、「異端」とはあくまでその結果に過ぎないのだと。
僕自身すごく刺激を受けましたが、「自分の人生」を生きている自覚がない方には、
もっと刺激的な一冊になるのではないかと思います。ぜひご一読を。